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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)1675号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は昭和三一年一二月一三日被告銀行板橋支店に対し一〇、〇〇〇、〇〇〇円を預入人原告、期間三ケ月、支払期日昭和三二年三月一三日、利率年四分の約で、一口の同金額の無記名定期預金として預入れ、支払期日に原告はその預金証書と預入の際使用し被告銀行支店へ届出でた印かんを同銀行板橋支店長訴外末森省三に手渡し、金額・期間・利率について前同様の条件による新定期預金に書替継続してくれるよう手続方を申入れたところ、同日、同銀行は期間・利率については原告の申入と同様であるが、金額についてはこれを金三、〇〇〇、〇〇〇円二口と金二、〇〇〇、〇〇〇円一口とした各無記名定期預金及び証書の名宛人訴外上野木材工業株式会社取締役社長上野松寿とする金二、〇〇〇、〇〇〇円一口の記名式定期預金、都合四口の預金証書四通を発行し原告に届け、その際同支店長は右書換手続における預金債権の分割及び内一口について名宛人を前記のとおり記名式にしたのは同支店の被告銀行本店に対する業務の都合上であるから諒承して貰いたいと述べたので、原告もこれにたいし特に異議を述べなかつた。

以上の事実関係に基き、原告は第一次的に当初の一〇、〇〇〇、〇〇〇円一口の預金契約による預金の払戻を求め、予備的に書換後の預金契約の預金者が実質的に原告であることから書換継続にかかる定期預金契約による預金の払戻を求めた。なお原告は当初訴状に基き本件予備的請求の申立と同一の請求をしていたが、第三回準備手続期日において訴を変更し右請求を撤回した。

被告は(争点一)第一次の請求につき、預け替のさい当初の予金契約は消滅したと主張し、(争点二)予備的請求につき本案前の抗弁として本件予備的請求はすでに準備手続において撤回されたから口頭弁論期日において再び主張することは許されないと抗争した。

判決は争点一につき被告の主張を容れ、争点二について本件の場合には民事訴訟法第二五五条の適用があるとして被告の抗弁を排斥し、つぎのとおり説明している。曰く。

「然るに右書換に関して、被告銀行は定期預金の性質上、原告は預替をなしたのであるから前記認定の当初の無記名定期預金につき預金債権の消滅を来したうえ、これに代わつて新規に預金債権を取得した訴外上野松寿または訴外上野木材工業株式会社に対して原告は債権の帰属を追認したものであるとの意味で抗争するから、次にその預替の性質を考えるのに、定期預金については、契約所定の期限到来後に該預入金員の現実の返還を求める代りに右金員を目的として新な同種または、異種の預金契約をなすことがあるが、かかる場合仮りに金銭の授受がなかつたとしても、その授受が省略されたものであつて、特段の事由がない限り、旧預金契約は目的を遂げたものとして終了するのが例であつて、旧預金債権の新預金債権への移行は預金契約につき更改があつたと通常看なされるべきものであろう。」

「民事訴訟法第二五五条第三項の解釈については準備手続終結に際して撤回した主張に関しては同条項の適用がないとするべきなのが原則である。(最高裁判所昭和三二年(オ)第六五二号判決最高裁判所判例集第一四巻第二号一九六頁参照)右同条項の適用がない新な申立事項の中には法律上の主張も一般的に入るであろう。併しながら、本件においては原告の予備的請求の申立は、被告銀行が原告の主位的請求に対して述べた抗弁事実に対応する原告の法律効果の積極的な援用であつて、その請求原因事実は被告銀行の抗弁事実と殆ど全く一致しているうえ、口頭弁論及び準備手続を通じて当事者間に定期預金の預替につき事実上及び法律上の主張弁駁が相互に終始交されていたことは本件訴訟の審理上甚だ顕著であるから、原告の本予備的申立があつたとしても、被告銀行にこれに応ずるための特段の負担を課したものとは思われない。そうだとすれば、本予備的申立は別の見地からすれば、裁判所の釈明権行使の範囲に属しないとはにわかに断じがたいうえに、その申立の追加による訴訟の著しい遅滞は到底認めることができないから、訴訟追行の負担の均衡と審理の適正の見地から、前記民事訴訟法第二五五条第三項適用の制限も本予備的請求の申立の許否には及ばないと解するのが相当であつて、結局被告銀行の抗争は理由がないといわねばならない。」

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